あー、何とか無事終えました。Verteidigung。
Verteidigungとは学位請求論文に関する公開討論会のことです。
Dissertation(博士学位請求論文)を提出しただけでは学位授与の資格はまだ満たされておらず、
論文と討論会の評点を付き合わせることによって合否が判断されます。
とりあえず、ドイツ語で言うところの”bestanden”しました。つまり「合格」しました。
今日も朝からバタバタしっぱなしでした。
朝8時頃から口頭発表の準備と原稿の再修正。お昼頃ジュースと水を買いに行き、その後昼食。
Verteidigungはある種「戦」のようなもの。出陣を前に、日本人らしくお米を食べました。
その後、昨日買ったシャンパンとジュースを運ぶために、LuisenstrasseのGermanistisches Institutに移動。
さらに、パワーポイント用のプロジェクタを借るために、路面電車に乗ってHerweghstrasseのInstitutに移動。
プロジェクタを受け取った後、プレゼンテーションで配るハンドアウトのコピー。30部。
その後帰宅。しばしリラックスした後、今日の戦闘服であるスーツに着替え、17時前に出発。
口頭発表時は出来るだけ早い目に会場入りし、機材チェック等をしておかねばなりません。経験則からです。
Verteidigung開始は18時。17時15分頃会場に到着したので、準備時間は十分すぎるほどありました。
しかし、不測の事態に手間取りました。パワーポイントのスライドを映すホワイトボードが真っ黒。
黒板消しのようなもので消しても、それ自体がすでに真っ黒になっているので、消せども消せども全然消えない。
秘書室に人の姿が見えたので、雑巾でも借りようかと思ったのですが、
昨日グラスの件を訊ねた時にあまり感じがよろしくない人だったので、諦めてトイレットペーパーで拭くことにしました。
何度か拭いているうちにピカピカになりました。
さて、今度は機材チェック。といっても、パソコンもプロジェクタも問題なく動いてくれました。
18時15分ぐらい前からポツポツ人がやってきました。
一番最初にこられたのは、月曜日の予行演習の帰りに途中まで一緒に帰った辞書編纂されている男性です。
開口一番「ゼクトの準備は出来ましたか」(笑)。
私が月曜日の帰りにゼクトの手配について色々質問したので、ちゃんと揃えられたか心配して聞いてくださったのです。
18時10分前ぐらいになると、主査の先生、学部事務局の副学部長(Prodekan)、そして審査委員の先生が来られました。
この副学部長さんは今日初めてお会いする方で、女性の教授です。「こりゃ、きっつそうな人だなー」というのが第一印象。
本来、こういう場では副学部長ではなく学部長が取り仕切るのが慣例なのですが、
私の場合、学部長が論文の副査を兼任しているため、規定上Verteidigungのまとめ役は副学部長になりました。
一番最後に来られたのは学部長兼副査の先生。白髪で、外出時はシルクハットをかぶるすごいオシャレな先生。
主査、副査、審査員、そして副学部長が私の目の前にズラリと並びました。
その後ろには、忙しい中足を運んでくださったInstitutのアシスタントの方々と会場の秘書さんが座りました。
まずは副学部長さんによる挨拶。引き続いて私の簡単な経歴説明があると思っていたのですが、
何とこれは「あなた、自分でしてください」ということになりました。エジプト人の友人の時は違ったのに、何故。
どこから来て、どこで学んで、いつMagister(修士号)を取得し云々を簡単に説明しました。
その後、私の発表が始まりました。
午前中練習したときは、パワーポイントのクリックをミスしまくってましたが、
数度練習したかいがあったのか、ミスすることなく最後まで発表をやり遂げることが出来ました。
口頭発表はまだいいんです。私が一人で喋るだけですから。その後の質疑応答が怖い・・・。
発表原稿が最後のページになった時、ガタガタ震えだしたぐらいです。
緊張からではなく、ほんとに恐怖からでした。
そして発表終了。締めの言葉 “Vielen Dank für Ihre Aufmerksamkeit” 、言いたくなかった・・・。
まず主査、副査、審査員、そして副学部長との質疑応答合戦です。先陣を切ったのは主査の先生。
主査の先生は喋る速度がとにかく速いのですが、最近プレゼンの練習等でショッチュウ話しているので、
耳が慣れてきていました。なので「何とか聞きとって答えられる」という勝算はありました。
そして、聞き取りの際に即座に作戦を思いつきました。とにかく「質問ですが」という言い回しを聞き逃さないこと。
「質問ですが」という言い回しが来ると、自ずと決定疑問か補足疑問の表現が来ます。
それをとにかく集中して聞き取るということに徹し、合間の会話は聞き流す程度に留めることに。
合間の会話を真剣に聞こうとして「あ、聞こえないー。やばい」となると、一気に戦意喪失しますから。
そんなこんなで、主査の先生による質問は何とか答えることが出来ました。
次の質問者は公開討論の審査委員。この方とはメールでしかお話したことがありませんでした。
どういう話し方をされるのか全くわからなかったので一番恐れていたのですが、
わかりやすく話してくださったので、2つ質問されたけど何とか聞き取った内容を頭に残して答えることができました。
質問とそれに対して私が回答するというやり取りが約30分ほど続きました。
私の方と言えば・・・。綺麗なドイツ語を話すように心懸ける一方で、
理解できた質問については、とにかくブロークンになってもいいから徹底的に答えることに専念しました。
公開討論で大事なのは、相手から来る質問に素早く答えて納得させることですから。
「聞けない」ということは相手を納得させる以前の問題。それを今まで私は全然出来ていなかったのです。
「相手の質問内容を聞いて理解すれば、答えるのは何とかなる」という姿勢で臨んだのがよかったのかも。
次は審査員の先生方以外との公開討論でしたが、特に質問はなく終了してしまいました。
終了後、主査、副査、公開討論の審査員、そして副学部長が別室に移動しました。成績を決めるためです。
10分後、部屋に来るよう呼ばれました。評点が決まったのです。
まずは副学部長から「オメデトウ、合格しましたよ」と合否を教えてもらいました。
それから論文と公開議論各々の評点も教えてもらいました。
論文は「可」でした。しかし公開議論は何と「良の上」。
嬉しいというよりも不思議でなりませんでした。あれほど苦手にしていた聞き取りと会話がメインの公開討論で、
こんなにいい成績をもらえるとは。んー、ドイツ語下手くそだったのに・・・。
私が先に会場に戻ると、しばらくしてから審査員4名が入ってこられました。
この時、聴衆は一斉に起立するという慣習があります。私も背筋をピンと伸して起立しました。
合否の報告は副学部長さんの役割です。「合格」と告げられるとみんなから拍手で祝福してもらいました。
最後に一言スピーチしなければなりませんでした。
主査、副査の先生、公開議論の審査員さん、副学部長さんはProfessor故に個別に名前を挙げながら、
次にInstitutのアシスタントの人達、最後にその他の参加してくださった方に感謝を伝えました。
そしてやはり日本的に深々と御辞儀をすることで最後を締めくくりました。
続いて祝賀会。シャンパンで乾杯です。
今日までメールでしかお話したことがなかった審査員の先生とたくさんお話させてもらいました。
グラス片手に質疑応答の延長戦のような状態になりましたが・・・。
イランからの女子留学生さんにも話しかけられました。同じ外国人ということで関心を持ってもらったようです。
今年から今回私の論文の副査をしてくださった先生の元で勉強を始めることになったとのこと。
Institutのアシスタントの方も次から次へとお祝いの言葉を頂きました。
今学期だけ在籍し、週末に帰国するというアルバニアから来た女子留学生さんからも。
とても綺麗な人なのです(アルバニアは美人の産出国らしい)。コロキウムにも毎回熱心に参加されていました。
先週の木曜日に初めてお話しし、ハレでの留学に関心があるとのことで、研究環境等いろいろ質問を受けました。
残念ながら週末に帰国しちゃうのだとか。。。
「きつそうだなー」という第一印象を得た副学部長さんでしたが、実際は気さくに話しかけてくださる方でした。
さてさて、最も大きい山を今日無事動かすことが出来ました。数年来の目標が叶いました。
2,3年前は「もうだめだ」と諦めかけ、帰国することも考えたほど。作業が進まないときはほんとに大変でした。
技術や知識はまだまだ未熟でも、その中で真面目に自分ができる範囲でこつこつやってきたことがよかったのかな。
主査である私のProfessorもそれは認めてくださっていたようです。嬉しい限りです。
また、のびのびと、私のペースでやらせてもらえました。焦らされることなく、誰かと比較されることなく。
誰かといつも比較されるとほんとに辛い。私は私、なのですから。
今の心境は・・・。嬉しいという気持ちは実はあまりないです。
ホッとしたというか何というか・・・。わかりません。
実質今日で「学位取得は決まり」なのですが、授与に向けて実はまだあと一つだけ作業が残っているのです。
これから学位授与までどうするか、明日Professorと相談します。あ、明日も18時からコロキウムだ。
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