2011年1月30日日曜日

1500円也 -Retina Ib-


実はAgfa Siletteの前に、もう一台落札していました。もはや病気かな。
ごく希に「コレクション整理」と称して、大量に出品される方がいらっしゃるのですが、今回のはその中の一台でした。


名機ばかりが出品され、どれも5000円以上の高値で落札されていく中、一台だけ入札数がのびていないものがありました。
「このカメラで撮影したことがないので動作するかどうかわからないし」と胡散臭いことが書かれていましたが、
「1500円ぐらいなら」と思い、ちびちび入札していたら1500円ほどで入札時間が終わってしまい落札。


実は先日延着した商品というのがこれだったのです。4日に「初夢」気分で落札して、届いたのが20日だったという・・・。


さてさて、落札したのはKodak社のRetina Ibという蛇腹カメラです。でも35mmフィルムカメラ。
Retina(レチナ)というカメラもまた、ドイツカメラ史において必ず語られる大変重要なもののひとつなのです。
Kodak社は元々米国の会社です。今日もありますね。その会社が1931年にドイツにあったナーゲル社を買収します。
しばしば米国のKodak社と区別するため「ドイツコダック」と呼ばれます。
このナーゲル社は大変高い技術力を誇っていたそうで、レチナはその技術力の元で誕生しました。

今日一般的なパトローネ入り35mmフィルムは、前回紹介したAgfa(アグファ)が初めて発売したものだったのですが、
それを普及させたのがレチナだったそうです。1934年に登場し大ヒットしたのだとか。
大ヒットしたとはいえ、作りや構造がかなりマニアックな故、普通の家庭では高級機だったのかもしれません。


現在でも国内外でレチナ愛好者がいるらしく、完動品は高値で売られているのだとか。
日本の中古市場で今どれぐらいの価格で流通しているのか調べてみたところ、1~2万円が相場みたいです。
それを何と1500円ほどで今回落札。それも何と完動品。フィルム巻き上げれバー部が欠けているものの動作は問題なし。




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今回落札したのはRetina Ibというもの。1934年に発売されたRetina Iシリーズの戦後版。
1950年代後半に販売され、エベレスト登頂時にも用いられたものだそうです。
Retina Iaという機種もありますが、Iaはフィルム巻き上げれバーが上蓋に、Ibは下蓋にあります。
レンズはドイツの老舗レンズメーカーであるシュナイダー・クロイツナハ製のクセナー2,8/50mmです。
シュナイダー・クロイツナハ社は今日高級レンズを多数販売していますが、当時は普及機用のも作っていたのだとか。
シャッター速度はB, 1, 1/2, 1/4, 1/8, 1/15, 1/30, 1/60, 1/125, 1/250, 1/500と当時のカメラにしては高スペック。
しかも目測ですが全速正確に動いてるようです。レンズも綺麗し、絞り・シャッターに粘りはありません。
シャッター音ですがものすごく静か。カメラごとにシャッター音が違うというのも、昔のカメラの面白いところですね。




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蛇腹を閉じたところ。前蓋右側にある銀色のボタンを手前に引いて、そぉーっと開けてあげます。
ファインダは小窓で結構見辛いです。オマケにちょっと曇っています。距離計連動ファインダをつけた方がいいかも。
折りたたむとかなりコンパクトになり、背広の内ポケットにすっぽり収まるほど。
ただこのカメラも殆ど鉄で出来ているため重いのです・・・。




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前蓋を開き、上から撮影してみました。正面に見える銀色のボタンはこの底側にも付いており、
蛇腹を折りたたむ時はこのボタンを上下一緒に押します。さらにこのカメラにはちょっとした作法があります。
距離環を必ず∞位置に戻してあげなければ、このボタンを押せない仕組みになっています。
前蓋を開けるたびにそうしないといけないので、速写向けのカメラとは言い難いですね。




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軍艦上部。Retinaと筆記体で彫りこまれていますが、これが何ともオシャレでとても気に入りました。
奥の筒状ボタンがシャッター。そのすぐ左斜め下にある窓は逆算式のフィルム残量メーターです。
メーターを戻したり調整する時には、メーターの下についているボタンを押しながら、矢印下のボタンを押します。

 


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底蓋部分。左側に見えるのがフィルム送りレバーです。
姉妹機にRetina Iaというのがあるのですが、Iaはこのレバーが上蓋上部についています。
当時、このフィルム送りレバーは画期的だったそうで「レチナ式」と呼ばれていたそうです。
フィルム送りの際にもちょっとした作法があります。これは特に重要で、守らないとカメラの寿命が縮まるか壊れてしまいます。
フィルム残量メーターが1になると、フィルム巻き上げれバーは動かなくなります。
「故障かな」と思って無理に巻き上げてはいけません。
ただでさえこのRetinaのフィルム巻き上げレバーの壊れやすさ脆さは有名だそうで、
部品の一部が柔らかい真鍮製で、無理に動かすと曲がったり破損したりするとのこと。
非常に珍しい部品故に、修理はかなり高額になるそうです。



Retina Ibを所有されてる方のHPで「距離∞のピントが狂っていることがある」という事例を見つけました。
「このカメラも・・・」と心配になり、フィルムを入れる前にチェックしてみたくなり距離を確かめる方法を色々探しました。
ピントの確認方法はすりガラスかそれに似たものでできるそうです。
すりガラスは手元になかったので、私はそれに近いものとしてフィルムケースを解体して使いました。半透明ですし。
やり方ですが、裏蓋を開けて、レンズ部分に適当な大きさに切った板を当ててあげます。
その状態でシャッターをB状態にすると、その半透明の板に像が上下逆さまに写ります。
このやり方を解説されていたHPには「ルーペでピントが合ってるかどうか確かめるように」とありました。
ルーペ、というか虫眼鏡すら持っていないので、正確にピントを調べられずにいたところ、アイデアが浮かびました。


「Exaのウェストレベルファインダーってすりガラス使われているし、ルーペもある。使えないかな」と。


早速試してみたところ上手く確認することが出来ました。
幸いなことに、私のRetina Ibは∞でのピントは合っていました。
巻き尺があったので、近接距離でのピントもテストしてみましたが、こちらも大丈夫そうでした。

次は実際にフィルムを入れてみないといけませんね。



ということは、ほぼ完動品であることは確実みたい。1500円でとんでもない掘り出し物をゲットしてしまったみたいです。
しかしこのRetina。Exa同様ものすごく物欲を満たしてくれる一品です。美しすぎる・・・。

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