2011年4月2日土曜日

最後のカメラはフォクトレンダー -Voigtländer Vito CLR-


滞在も1ヶ月を切ったので、カメラ集めもそろそろ終焉です。
最後に選んだのは、今は存在しない世界最古の光学機器メーカーであるフォクトレンダーのカメラです。


フォクトレンダーは18世紀(1756年)にウィーンで操業を始めた光学機器メーカーで、
鉱山用のコンパス、顕微鏡、オペラグラス等を製造するなど、カメラが発明される前から活躍していたそうです。
その後本拠地をブラウンシュヴァイクに移します。


戦前はベッサ等の高性能蛇腹カメラを、戦後はヴィトー、ベッサマチック、ビトマチック等々のカメラを手掛け、
レンズでは戦前はスコパー、ウルトン、ランター等々を発表し、50年代から急成長をとげます。


特に、50年代、60年代に登場したカメラはレンズのよさから(カラー・スコパー)人々に親しまれたそうです。


その後、フォクトレンダーは経営が厳しくなり、西側のツァイス・イコン社の傘下に入ります。
この頃、カメラ産業では日本製カメラが台頭し、ドイツのカメラ産業は徐々に窮地に追い込まれていました。
ブランド名もツァイスイコン・フォクトレンダーとなり、台頭する日本製に対抗し生き残りをかけた策のようです。


しかし、その企業努力も実ることなく、ツァイス・イコン社はカメラ事業から撤退し、
フォクトレンダーブランドはローライに譲渡されます。同時にブラウンシュヴァイクの本拠地を閉鎖してしまいます。
しかしそのローライも1981年に一旦倒産・・・。その後、フォクトレンダーブランドはプルスフォトに移り、現在に至ります。

 

今でも50年代後半から60年代にかけて登場した高級機は、中古市場において高値で取り引きされています。
「最後に100ユーロぐらいまでなら・・・」と思い、レンズシャッター式一眼レフであるベッサマチックに手を出そうとしましたが、
メカニックが複雑怪奇で、故障が多い機種という評判をあちこちで見たので、普通のレンズシャッター機を探すことにしました。



最終的に絞り込んだのは、ヴィトーBシリーズの廉価版ヴィトーCシリーズです。
廉価版とはいえ、高級レンズであるカラースコパー50mm/2,8を搭載しており、露出計&距離計付きのものがあります。
しかしこのシリーズ、私が探した時は完動品があまり見つかりませんでした。
手に入れるのを断念しかけたところでVito CLRというのを発見しました。価格は送料合わせて約2000円でお得。
レンズはカラースコパーで連動距離計&単独露出計というヴィトーシリーズの中でも実用的なものです。





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購入したお店は一応カメラ屋でしたが、カメラの状態を訊ねたら「職人による最低限の調整のみ」とのことでした。
オーバーホールはされておらず「オーバーホールすると100ユーロかかる」と言われました。
「動作状態は100%完璧」とのことだし、価格も2000円ほどだったので思い切って購入してみることにしてみました。
持った感じはズシリと重い・・・。シャッター音はショボイですが。

 

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軍艦上部。フォクトレンダーというロゴが筆記体で記されています。ファインダーは等倍ファインダーです。明るくて見やすい。
当時等倍ファインダーを搭載していたメーカーはフォクトレンダーと高級機メーカーのライカだけだったそうです。


 

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レンズは上述の通り高級レンズで描写の評判がとってもよいカラースコパー50mm/2,8です。
シャッター速度はBから1/500。二重像を重ね合わせる連動距離計が付いており、前玉を回して調整します。
この連動距離計、狂っている個体が多いとのことで心配していました。
メジャーで距離を測って、近距離を1m、2mと測定してみましたが、幸いなことに大きな狂いはありませんでした。
無限大は若干行きすぎますが、これは被写界深度を利用することでなんとかなります。
絞り羽根の粘りもなく、露出計のセレンもまだまだ元気です。大きな狂いもなく、妥当な数値を示してくれています。
軍艦上部に前の所有者が自分の名前を彫りこんでいるのはマイナスだけど・・・。



特に建物撮影と近距離での撮影に威力を発揮するレンズということで、試し撮りが楽しみでなりませんでした。

一度試し撮りしたのですが、紙への焼き付けの際に失敗があったみたいで、
レンズの汚れでは出来ない変なシミが沢山ついていました。dm、いつもは上手に焼いてくれるのに今回はお下手でした。
なので、12枚撮りフィルムでもう一度試し撮りを行い、今度は別の現像所で現像してもらいました。

現像代はちょっと割高でしたが、現像所の腕もよかったせいか素晴らしい写真が出来上がってきました。
発色もよく、なにより描写が力強い。特に近距離ではシャープな写りという評判は本当のようでとても気に入りました!!!
遠距離も絵が潰れたりすることなくいい写りをしてくれています。

 

試写したものは次の記事でアップします。

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